私が、三月末で職を退くということを聞いたS地区のおとうさん方が「お別れが避けられないなら、ぜひ、ここの地区の子どもたちのために、先生のことばを書き遺しておいてやってください」と、大きな紙をもってこられました。字を書くことの下手くそな私なのですが、遺言のつもりで、勇を鼓して、私は、次のように書きました。
「自分は自分の主人公」
自分は自分の主人公
世界でただ一人の自分を創(つく)っていく責任者
少々つらいことがあったからといって
ヤケなんかおこすまい(中略)
ひとりの喜びはみんなでわけて
大きい喜びにして喜びあい
ひとりの悲しみはみんなでわけて
小さくして背負いあい
いばったり いばられたり
いじめたり いじめられたりする関係を追っぱらい
みんな仲良く ひとり残らず
存分に光を放ちあって生きられるような
光いっぱいの地区 光いっぱいの町を
つくろうじゃないか
だって
自分の地区 自分の町だもんな
自分はその主人公 責任者なんだからな。
出典:東井(とうい)義雄(よしお)「正直者からは正直者の光が」探究社・法藏館(令和6年8月)2頁—5頁