皆さん、東昇(ひがしのぼる)先生という先生のお名前、聞いたことありませんか。京都大学の名誉教授で、一ミリの百万分の一、こんな世界を研究していらっしゃる先生です。(中略)この東先生がね、猫は生まれてすぐ人が育てても猫に育つ。犬は生まれてすぐ人が育てても犬に育つ。ところが、人間は人間の子に生まれたからといって、人間に育つとは決まっていない。今日の学者の定説では、約五千通りの可能性を持って生まれてくるとおっしゃっているんです。(中略)
しかし皆さん、今も獣には簡単になれますよ。どういう獣になれるか。「なまけもの」という獣には今すぐにでもなれる。もう狼にはなれんでしょう。しかし死刑囚にはなれるんですよ。五千通りの可能性の中には、死刑囚になる可能性を皆さんたちはちゃんと持っている。私も持っているんです。誰もがその可能性を持っているんです。(中略)
その五千通りの可能性の中からね、どんな自分を取り出していくか。皆さん一人ひとりがその責任者なんですよ。皆さんはこんなにたくさんいるように見えますけどね、自分はひとりしかいない。(以下、略)
出典:東井(とうい)義雄(よしお)「正直者からは正直者の光が」探究社・法藏館(令和6年8月)22頁—25頁