人間は五千とおりの可能性をもって生まれてくるというのが、今日の学者の先生の定説だということです。(中略)
お釈迦さまも、お若い頃、たくさんな可能性の中でお迷いお悩みになりました。けれども、遂に、この大宇宙の根源のところで、はたらきづめにはたらいている大きな願い(本願)に目覚められ、この願いに生きる以外に自分をほんとうの自分に育てる道はないことを自覚なさり、それを私たちに教えてくださったのです。
うっかりしていると見過ごしてしまうような小さいすみれにも、願いはかけられているのです。「小さくてもいいのだよ、あんたにしか咲かせることのできないあんたの花を、力いっぱい咲かせておくれよ」と。花のいのちの短い桜にも「花のいのちの長い短いは問題じゃないんだ。力いっぱい咲くことこそがだいじなんだ。力いっぱい咲いてくれれば、それでかわいいさくらんぼが誕生してくれるんだよ」と、そんな願いの声がきこえてくるではありませんか。
出典:東井(とうい)義雄(よしお)「こころの味を大切に」探究社・法藏館(令和7年8月)2頁—3頁
