(前略)小四 亮太
ぼくのおとうさんは、ぼくの小さいときに死にました。それでも「とうちゃんは、どこかでぼくのすることを見とるんや」と、かあちゃんはいいます。(中略)
この間のばん、ぼくはしゅくだいをやっていると、かあちゃんが「亮太は勉強がすきになったでええな」といいました。「ちがう、ちがう」というと、「勉強きらいなもんはえらい人になれません」と、かあちゃんがいいました。「へえ、そんなら、おらの組では、健ちゃんがいちばん、えらいもんになるんかよ。なら、おら、えらいもんなんか、なりたかねえ」と口答えをしました。(中略)
ぼくはかあちゃんのところへいって「かあちゃんたたいて」と、頭をだしました。すると、かあちゃんは「もう、ええから、勉強しな」といいました。「そんなら、とうちゃんのぶん、たたいて」といいました。そしたら「よし」といって、かあちゃんは、わらいながら、ぼくの頭を、一つ、コツンとたたきました。ぼくは、うれしくなって、また勉強をやりました。ぼくはかあちゃんが大すきです。
…亮太くんの中に、お母さんは、みごとに、お父さんを生かしていらっしゃいます。
出典:東井(とうい)義雄(よしお)「こころの味を大切に」探究社・法藏館(令和7年8月)6頁—8頁
